治験サイト登録したけど使わなかった話

楽に稼げたらいいなぁ。

大多数の人間が一度は考えると思う。

私は何度も(実現させる気なんてないけど)思った。現実逃避みたいな。

不労所得に恵まれまくって遊んで暮らせたら凄くいいなぁ〜〜〜って、冗談だけで言ってるタイプ。宝籤当たらねえかなぁって買いもしないで言うタイプ。良く居る、言うだけ口だけの夢想家。

 

治験、って言葉を知っているだろうか。

新薬の実験台になったりする代わりに報酬が出たりするよ〜みたいな医療系アルバイトだ。

入院も伴う様なかなり美味しい案件だと高額報酬だったりするらしい。

有閑無職なら一考の価値あり、という奴。

楽に稼げるバイトらしいよって噂のアレの一つで、興味持った事ある人も少なくないのでは。

 

登録制の治験紹介サイトってものがある。仕組は求人サイトみたいなものだ。

私は数年前にある治験サイトに登録してみた事がある。完全に好奇心、出来心。

 

私は実家を出て上京して来ており、単身世帯。

まだ学生で、本格的な健康診断(人間ドックとか)は全く無縁、基本的に病院とは程遠い生活をしていた。

 

治験サイトに登録すると、ステータスを申告する事になる。

性別、年齢、身長、体重、血圧、コレステロール値、病歴なんかだ。

 

性別年齢身長体重は、わかる。まぁわかる。

病歴も特に大きなものはないので(季節性のインフルエンザくらいなので申告する様な持病にはならない)言う事ないし、食物アレルギーもない。服薬も日々常用するようなものはない。適宜風邪薬や頭痛薬に頼る事はあるがそれくらいだ。書く事がない。

そんな訳で、概ね「健康体を対象とした治験」向きの検体(この表現で正しいだろうか)であろう事になる。

 

ここで、血圧やコレステロール値の様な数値が不明なので困る。

勿論必須項目ではないのだが、計測しもしない項目が並び、これらの数値が基礎的な判断に概ね最低限必要だと考えられている事を察する。

 

サイトを通じ、交通費のみ自己負担、無料の健康診断が出来るらしい。

この基本項目が埋められる感じの簡単な検査。勿論日帰り、予約さえ取れれば拘束時間は少ない。

登録からかなり経ち、長期休暇中だったろうか、忘れた頃になって一度その検査は受けた。

結果は失くした。サイト側で勝手に記入されるのではなく自力で打込めみたいな感じだったんじゃないかな。どっちだったっけ忘れた。

 

その日の大した量も抜かない採血で、生まれて初めてぶっ倒れた事だけ覚えてる。私が吃驚した。

でかくもない普通の、割と見たことあるサイズの注射器二本弱抜いた。全身の血液全量からして誤差みたいなもんだと思った。献血なんて200cc400cc抜くんだぞ‥?

「大丈夫ですか」との問い掛けに「はい全然」と応えて、止血部分のガーゼを押さえながら立ち上がった直後平衡感覚を失って、そのまま立てなかった。

はっきり気持ち悪いと感じて、「え、そんな事ある‥?」と自分の状態が信じられず、ともかくも看護師さんに両側から支えて頂いて一床お借りした。そうするよりどうしようもない。

採血前に「ご気分悪くなる方もいらっしゃるんですが、その様な経験はお有りですか」と訊かれたとき、「200cc献血でも大丈夫だったので余裕です」と笑顔で答えたのにだ。

私だって、まさかこんな少量の採血でぶっ倒れると思ってない。けどそれが現実だった。あるんだなぁ本当に‥。

 

気分が良くなるまで暫く休んでその日は帰ったけど、それ以来採血の機会には少しの憂慮がある。意外と私も倒れたりするんだなぁって。

はっきりと「倒れた」のはそれが初めてで。

以後一度いきなり立っていられなくなった事はあるけれどそのくらい。多分熱中症的な奴だったな。脱水症状。

意識まで飛ぶ様な倒れ方する場合、どんな状態なんだろう‥。

私は倒れるまで動けない。大体、もっとずっと早く、ちょっと疲れた時点で滅茶苦茶に眠くて起きていられなくなる。強制スリープモード。

だから頑張って沢山動いて疲れを溜め込めて終う人達が寧ろ凄いなと思う、私は体力が労働や社会生活に追い付けないのがもっと問題だけど。

 

果てさて、結局必要項目カッスカスだけど健康診断は受けた。

あとは募集要項を眺めて、条件と日程が合致したら応募、通ったら実際の治験に参加するのだ。

 

わたしとて無限に暇な訳がない。

日程、合わせるの厳しいかもな〜。条件合うのかな〜。

概ねこの位は考えた。

そうして気が向いた時、気紛れに募集案件を眺めてみたのだ。

 

しかしこれがまあ、蓋を開けてみれば大変だったのである。

私に一致する条件の募集が全然掛かっていない。日程調整以前の問題だった。

 

どういうことかと言うと、端的に体重が足りない。

 

私の登録したサイトでは、特定の持病を持つ方を募集する案件も多かった。生活習慣病が関心の高い物であるらしく、高血圧、メタボ、Ⅱ型糖尿病、肝機能障害、心疾患‥と言ったテーマを多く扱っている。この時点で私は弾かれる。

又それに関連して、大体治験対象を男性に限るのだ。圧倒的に男性のみ集めている案件が占め、両性対象のもの、況して女性限定のものは少ない。これも厳しい。

加えて心身に不調の出てくる年代を狙っての案件も多い。四十代以上、とかだ。私は二十代である。

 

そうした中で、健康な二十代女性が参加可能なものを見付けると、その「健康」である事の指標として必ず指定されているものがある。

体重。

BMI20以上、18.5以上、18以上。

若しくは、体重50kg以上、45kg以上、女性は40kg以上、一律40kg以上。

以上の内どれかが記載されているのだ。必ず。

 

私は比較的身長が低く、且つBMI18を滅多なことがない限り割っている。40kgであれば超えている事もあるが、割っている事も少なくない。

そしてBMI指定の場合どんなに譲歩されていても18は要求される。

体重が指定される場合、40kgが指定される事自体が殆どない上に、更に私がそれを超している事も確実ではないのだ。

特別細い訳ではなく皮下に脂肪はそこそこ以上溜め込んでいるものの、筋量がとにかく足りない。従って微妙に軽いのである。

 

詰まる所、参加資格がない。この一言に尽きる。

 

従って、私はサイトに登録した所でちょっと健康診断を受けただけ。それから先は何も出来ないのだった。

全然美味い話だったりしないなあ、当たり前か、なんて思いつつ終わった。

私は例え無限に暇していたとしても無理なのだった。

 

もしこれを見て、BMI18や20、それなりにタッパがあって余裕の体重45kgや50kgお持ちの方、あなたには案件が開かれてるので検討してみては。私と違い無駄一辺倒に終わらなくて済むから。

逆に、治験って健康でなければならないと思ってた方。生活習慣病や肥満の方を対象としたものは特に多いし、意外とそんなことないので一度覗いてみてもいいかも知れない。

ただ、私には無縁のものだったのだ。

これはそんな思い出話。